女性化乳房に関してよくいただく質問の一つが「保険で治療できるのでしょうか?」というもの。結論から言うと「できる場合もある」です。ただ、それがみなさんにとってベストな選択かどうかは別問題だと思います。症状によっては、必ずしもそうとは言い切れません。保険診療を担うドクターの事情もありますし、保険診療の場合、治療にも実は限界があるのです。どういったことか、以下で詳しくご説明しましょう。
まず保険の適用範囲を、実態に即して少し詳しくご紹介します。
保険適用の判断基準①:乳腺の大きさ
乳腺は元来男性にも備わっているものです。したがって、乳腺が存在すること自体は異常ではありませんし、当然その摘出も保険治療の範囲で行われるものではありません。ただし、この乳腺の異常肥大が認められる場合の摘出には、保険が適用されることがあります(乳腺の肥大が原因で胸が膨らんでいる女性化乳房は「真性女性化乳房」と呼びます:図参照)。
保険が適用されるかどうかの一つの目安は、乳腺の大きさです。肥大した乳腺の大きさが5cm以上の場合は保険が適用されることが多いです。
保険適用の判断基準②:医師の裁量
5cm未満でも保険が適用されるケースがないわけではありません。そのあたりの判断は医師の裁量に委ねられています。担当医が保険での治療の必要性を認めれば可能です。
女性化乳房に保険が適用されないのはどんなケース?
次に、どのような場合、女性化乳房治療で保険が適用されないかをご説明します。
保険が適用されないケース①:偽性女性化乳房の場合
女性化乳房(胸の膨らみ)の原因に乳腺の発達が関与しておらず、純粋に脂肪の蓄積だけが原因の場合は、保険の適用外になります。
保険が適用されないケース②:医師の裁量による場合
「保険適用の判断基準②」の内容と矛盾しますが、乳腺の発達具合にかかわらず医師の裁量によって保険での治療が受けられないケースがあります。どういうことかと言うと、医師が治療を断ることもありうるということです。真性女性化乳房は乳腺の異常発達が主症状ですが、それ自体は人体に悪影響を与えるものではありません。よって、悩みの中心は見た目に関するものです。つまり「改善したかどうか」の基準が曖昧になりがちで、治療後にトラブルになりやすい疾患と言えます。こうしたことを考慮して、保険診療を日常的に行っている医師で、見た目や美容を意識した手術に不慣れな医師は、治療を「敬遠しがち」というのが実状です。
女性化乳房の治療は保険が効くの? 結局まとめるとどうなるの?
ここまでの内容を大きくまとめると次のようになります。
- 乳腺の発達が認められない偽性女性化乳房の場合は保険の適用外。
- 真性女性化乳房の場合、保険で治療が受けられるかどうかは、医師の裁量による。
保険の範囲で治療を受けたいと考えた場合、どの医療機関でも受けられるとは限らないというわけです。
女性化乳房は保険診療で治療すべきか? 自由診療で治療すべきか?

この判断は、今度は患者さんご自身の裁量に委ねられます。要は治療に何を求めているかで選択が変わってくるということです。
例えば、術後の見た目は二の次で値段重視。純粋に肥大した乳腺を普通のサイズしたいとお考えであれば、保険診療での治療を選ばれるべきでしょう。
ただ、手術後の見た目こそが重要だとお考えなら、多少費用はかかりますが、自由診療の美容外科への受診をお勧めします。美容外科のドクターは、当然ながら美容(見た目)にこだわった施術に日常的に従事しているので、そのためのノウハウの蓄積は豊富です。また、美容外科の中でも、脂肪吸引を専門的に行なっているクリニックがベストでしょう。女性化乳房の場合、乳腺の発達と脂肪の蓄積の両方が認められるケースは少なくないからです。
ご要望に応じて、上手に医療機関を使い分けていただければと思います。当院(自由診療)の女性化乳房治療についてさらに詳しく知りたいという方は、ぜひ女性化乳房に関する【関連記事】もご覧ください。
まとめ
- 真性女性化乳房の場合は、保険で治療できる可能性はある
- ただし、治療後の見た目に関するトラブルを懸念して治療を断わる医師(医療機関)は少なくない
- 自由診療の美容外科は、費用がかかるが見た目への配慮は行き届いている